水をたくさん飲む猫の病気


猫が飲水から離れず音を立てて飲んでいる場合ただごとではありません。

猫は本来あまり水を飲まなくても平気な動物です。

自分の猫が水を飲んでいるところを余り見かけないと思います。

普段猫は用意した水を勢いよく飲む事はありません。

ある日、用意した猫用の水が半日でなくなっていると、猫がこぼしてしまったのかと思うかも知れません。

ですが、それが毎日続けばおかしいと気づいたとき、もしかしたら病気の予兆だと気付いてください。

トイレでおしっこの塊の数が急に増えたと同時に、水の減りが多くなったことなど、飼い主は猫に何か異常が起こっていると気付くことがとても大切です。

急な変化はわかりやすいものです。

しかし、この変化が少しずつゆっくり起きていると、なかなか気付けないものです。

慢性腎不全になっている猫に症状が見られ、時間をかけてゆっくり進行しますので、気付かないうちに病気が進行していることがあります。

甲状腺機能亢進症は病気に侵されていても元気に見えますので、異常に気づくのは難しいかもしれません。

しかし、これらの病気は初期に気づけば気づくほど猫にとって有益な治療が開始できます。



猫の多渇症と多尿症の関係のメカニズムは、喉が乾いて沢山の水を飲むことで尿が大量に出ることで多渇症が起きます。

体の水分を尿として絞り出してしまい、尿量が増えて脱水してしまうことで、水を沢山飲む多尿症に別けられます。

このような体の変化に異常起こす原因となるのが内分泌障害です。

内部分泌では様々なホルモンが作られます。

このホルモンの分泌異常によって内分泌疾患は引き起こされます。

下垂体は様々な刺激ホルモンの分泌と調整を行っています。

分泌されるホルモンには甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、性腺ホルモンの卵胞刺激ホルモン、黄体刺激ホルモンなどがあります。



成長ホルモン分泌下垂体腫瘍、末端巨大症

下垂体の成長ホルモン分泌が過剰になり、末端巨大症を発生します。

変化として、顔つきと体の大きさに変化が見られます。

成長ホルモンによる結合組織の増殖が体を大きくし、体重増加が見られます。

インスリン抵抗性の糖尿病があります。

抗利尿ホルモンを分泌する神経性下垂体の不全により、尿崩症が起きます。



甲状腺機能亢進症

正常の甲状腺は触って確認することができないのですが、甲状腺機能亢進症の猫は、肥大した甲状腺を確認することができます。

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンのチロキシンT4とT3の分泌過剰が起こる、多臓器に障害を起こす病気です。

10歳を超えた猫に多く見られる病気です。

甲状腺ホルモンの働きですが、全身の熱生産、炭水化物、蛋白、脂肪代謝を調整しています。

甲状腺機能亢進症はエネルギーの代謝と熱生産が活発になりますので、猫の食欲が増加します。

この病気を発症した猫の食欲は旺盛で、普通だった頃の食事量では到底足りず、飼い主に頻繁に食事を要求します。

驚くほど食べますので便の量も増えて、消化しきれず下痢になることもあります。

この病気の怖いところは、食欲が旺盛であるのにもかかわらず、体重が減少していくことです。

また、体重の減少しているのにも関わらず活発に動きますので、歳の割には元気になったと誤解してしまうこともあるのがこの病気の特徴です。

非常に響く声で、うめくように鳴く様子も見られます。

エネルギーの代謝と熱生産が活発になりますので、興奮して落ち着きがなく、熟睡できないこともあります。

甲状腺ホルモンは利尿作用もあり、喉が渇き尿量も増えていき、体の水分が足りず、被毛はボサボサになっています。

心拍数の増加、高血圧も見られ、鬱血性心不全が発症することもあります。

診断は血液検査でホルモンの定量、チロキシンT4を行うことで、正常値より高い値の場合は甲状腺機能亢進症と判断します。

『治療』
甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬剤の投与をします。



甲状腺癌

甲状腺機能亢進症が進行してしまうと甲状腺癌になる可能性が高くなります。



慢性腎不全

慢性腎不全は腎臓の機能が低下することにより、血液の中にある尿窒素を排尿しにくくなる状態を言います。

このため腎臓は尿量を増やして、尿窒素を排尿しようとします。

正常な猫の尿には、少ない量で沢山の尿窒素が含まれていますが、慢性腎不全の猫は、沢山の尿に少しの尿窒素しか作ることができないため多尿になります。

多尿になった猫は、必然的に大量の水を飲まなくてはいけなくなります。



糖尿病

糖尿病は膵臓のβ細胞が壊されて、インスリンの分泌が低下することによって起こります。

『インスリンの働き』
インスリンとは膵臓のβ細胞で作られるホルモンで、体内の細胞が血液のブドウ糖を取り込んで、エネルギーとして利用します。

インスリンの分泌が不足すると、細胞がブドウ糖を利用できなくなり、血中のブドウ糖濃度が上昇します。

高血糖と呼ばれる血糖値の上昇です。

この高血糖が持続することになると糖尿病の発症です。

糖尿病を治療しないでおくと、神経障害が現れます。

なぜなら血中の異常な濃度のブドウ糖が、神経細胞を障害するからです。

猫だと四肢の麻痺が起こり、手足の力がはらない状態になります。

中枢神経に異常をきたしているので、猫はまっすぐ歩こうとしているのですが、右回り、左回りしてしまうこともあります。

進行すると立つことが困難でトイレに行けず、尿失禁をするようにもなります。

視神経にも影響があり、目が見えなくなることもあります。

『治療』
インスリンを投与します。

『自宅でできる糖尿チェック』
糖尿を調べる試験紙を猫のトイレに置いてチェックをします。



慢性腎盂腎炎

腎盂や腎実質に感染を起こす、腎盂腎炎が繰り返し起こることで、腎臓が障害され腎不全となります。

『原因』
尿路感染を起こす細菌が、繰り返し腎盂に感染することが原因です。



神経性尿崩症

神経性尿崩症は、抗利尿ホルモンを放出する下垂体の障害によって発症します。
尿量を調整して、体の水分バランスを保つ抗利尿ホルモン分泌が低下してしまうため、非常に薄い尿を排尿します。

『原因』
中枢神経の炎症や腫瘍が原因です。



腎性尿崩症

腎臓が抗利尿ホルモンに反応しなくなり、尿を濃縮できないことで大量の薄い尿が出します。



食べるのが増えた猫の病気



食欲が旺盛と言うのは健康な証拠だと思いがちですが、ある日を境に食欲が旺盛になった場合、猫の出している病気のサインの可能性があります。

年齢を重ねた猫が今までとは明らかに違う食事に対する要求に飼い主を驚かせます。

いつもならキャットフードを5粒くらい残すのに、ある日から完食するだけでなく、おかわりを要求します。

飼い主はもの凄くお腹を空かせていたんだと思い、追加のキャットフードを与えます。

再度与えたキャットフードを完食したのに、またおかわりを欲しがる。

お腹を空かせた猫は、人間の食べ物にまで手を出すようになります。

このとき猫の性格が変わったんだと思い、飼い主は猫を叱るようになる場合があります。

ここで気付いて欲しいのが、性格が変わったのではなく何かの病気?

動物病院へ連れて行ってこの子の症状を伝えることが大切です。

また、これだけ沢山食べているのに、体重が増えるどころか痩せてきている場合は甲状腺亢進症です。



病気が完治した猫

病気をしていたとき、飼い主によって手厚い看護を受けた猫は病気が治った後も飼い主への忠誠心から、お腹が満腹でも与えられれば食べることがあります。

猫は飼い主を喜ばせたいという一心で、満腹でも食べ物を受け入れているのではないかと考えられます。



餓死を経験した猫

食べるものを満足に食べられなかった状態に置かれていた猫は、人間に保護されてキャットフードを与えられると、もの凄い勢いで食べ続けます。

これは私の体験なのですが、骨と皮だけの餓死状態の猫がいました。

いつ死んでもおかしくない状態でしたのでキャットフードを与えました。

そのとき食事を楽しむ食べ方ではなく、生死の中で沢山のキャットフードをできるだけ沢山、早く食べるような姿に衝撃的でした。

それから、半年ほどたって毎日食事が取れる環境にいるにも関わらず、食べる姿に変化はありませんでした。

さらに2年経つ今は、食べるスピードが少し落ち着いたように感じています。

生死を経験した猫だと、食事の変化に気付くことは困難かもしれませんが、飼い主が猫の成長を毎日見届けていると、僅かな変化に気付いてあげれるか思います。


沢山食べた食べ物は最終的に便になります。

消化が追いつかず便秘や様々な病気を併発させますので、早く気付いてあげることが大切です。



よく食べること以外の観察ポイント

・以前より動くようになった
・高齢猫なのに活発になった
・あまり眠らない
・声変わりをした
・鳴き方が激しくなった
・顔つきが怖くなった
・下痢
・嘔吐
・被毛が硬くなった
・体重が急に増えた
・あまり動かなくなった
・便が出ていない
・排尿、排便が多くなった
・人の手からしか食べなくなった
・見ていてあげないと食べなくなった


それぞれの原因について見ていきましょう。



甲状腺機能亢進症

甲状腺の働きが亢進することで、過食だけでなく活発な運動をするようになります。

心悸亢進が認められ、心拍数が1分間に230~240回と多く、高血圧が確認できます。

また、下痢が起こすと同時に腎機能の低下があります。

心肥大を併用することも認められています。

被毛は乾燥してパサパサになり、顔つきが変わっていき、元気もなくなり、食欲不振、衰弱していきます。

甲状腺機能亢進症の1~2%くらいは甲状腺癌の報告があります。


『治療』
甲状腺ホルモンの合成阻害薬を投与します。



副腎皮質機能亢進症

中年から高齢猫に認められ、糖尿病の併発があります。

皮膚が脆くなる症状があります。


『治療』
外科的手術を行います。



巨大結腸

巨大結腸は結腸の機能障害による便秘のことです。

腸は便の大きさに合わせてある程度の拡張できますが、巨大結腸の怖い症状として、数日分の便が溜まっても猫には便意がほとんどありません。

猫は便意がないので更に食べ続けてしまい、嘔吐、食欲不振になり脱水してしまいます。


『治療』
キャットフードの変更と内服薬を使います。

浣腸はあまり効果がないことがありますので、全身麻酔をして肛門に指を入れ、便を砕いて掻き出します。

肛門から掻き出せない場合は、外科的に結腸の切除手術を行います。



過食

餓死を経験した猫の過食は凄まじいものがあります。

生後3カ月の猫で、1日30~40グラム体重が増加することがあります。

普通の子猫だと1日の体重増加は20gが上限で、それ以上は異常事態です。

獣医師が処方する処方食と、体重が落ち着くまで食べる量を調整して与えていくことが大切です。



精神的過食

病気で食欲が無い猫を見て、飼い主は手の平にキャットフードのせて食べさせていた猫がいます。

猫は病気から回復しても、飼い主の手からでしか食べず、キャットフードを猫の食器に入れておいても食べません。

猫はお腹が空いてなくても飼い主の差し出すキャットフードを食べるこれらの状態を精神的過食と言います。

猫が闘病中、少しでも食べ物を口にした猫を褒めると、喜んだ飼い主の心は猫に伝わっています。

自分が食べれば飼い主が喜ぶことを覚えた猫は、自分の体を犠牲にしてでも食べるのです。

しかし、過食は次々と病気を併発させます。

精神的な繋がりは食べることではなく、遊ぶことで持てるように考えていきましょう。


『対策』
飼い主と猫の非常に密接な関係がよく見られます。

このような猫は留守番や預けることができません。

それでは飼い主が病気や事故などにあったとき、猫は飼い主がいないと生きていけなくなってしまいます。

いろんな事態を想定して、家族や親しい友人にも慣れていけるよう、日ごろから少しずつ練習するようにしていきましょう。